日本保利化成株式会社を調べてわかった廃プラリサイクルの本気度

銀行の法人営業部にいた頃、担当先の製造業から「廃プラの処分費が年々上がって困る」という相談を何度も受けました。当時の私にとって廃プラスチックは「コストがかかる厄介なもの」でしかなかった。正直なところです。

小野真紀子と申します。大手地方銀行の法人営業部で7年間、中小製造業への融資を担当したあと、「面白い経営をしている中小企業をもっと広く届けたい」と思い立ち、ビジネスライターとして独立しました。今は中小企業の経営者取材や、地方発のビジネス事例を中心に記事を書いています。

ライターになってから、廃プラスチックを「資源」として捉え直している企業があることを知りました。その一社が、群馬県太田市に本社を構える日本保利化成株式会社です。2018年設立の若い会社なのに、調べるほど「本気度」が見えてくる。この記事では、元銀行員の目線でこの会社の事業とSDGs経営を読み解いていきます。

日本の廃プラスチックリサイクル、知られていない現実

「リサイクル率89%」の中身を見てほしい

「日本のプラスチックリサイクル率は89%」。この数字だけ聞くと、日本はリサイクル先進国のように思えます。

ところが中身を分解すると、景色がまったく変わります。プラスチック循環利用協会が公表した2023年のマテリアルフロー図によれば、廃プラスチック総排出量は769万トン。有効利用率89%の内訳は次のとおりです。

リサイクル手法割合概要
サーマルリサイクル64%焼却時の熱エネルギーを回収する方法
マテリアルリサイクル22%廃プラを粉砕・溶融して再び素材にする方法
ケミカルリサイクル3%化学的に分解して原料に戻す方法

全体の約3分の2がサーマルリサイクル。要するに、燃やして熱を取り出しているだけです。欧米ではこの手法を「リサイクル」とは認めていません。「エネルギー回収」として別カテゴリで扱われます。

マテリアルリサイクルはなぜ伸びないのか

マテリアルリサイクルの22%という数字は、EUの35%や韓国の65%前後と比べてかなり低い水準です。

伸び悩む理由はいくつかあります。

  • 異なる樹脂が混ざった状態で排出されるケースが多く、選別のコストがかかる
  • 汎用プラスチック以外の樹脂を処理できる技術・設備を持つ企業が少ない
  • 再生原料の品質が安定しにくく、バージン原料から切り替えるメーカー側のハードルが高い

特に2番目のポイントは見落とされがちです。PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)のような汎用プラスチックはリサイクル先が比較的見つかりやすい。ただ、PC(ポリカーボネート)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)といったエンプラ・スーパーエンプラになると、対応できる企業は一気に限られます。

樹脂はそれぞれ融点も性質も異なるため、粉砕の仕方や溶融の温度管理が全部違います。混ざった樹脂を見極めて正しく分類し、素材ごとに適切な処理を施す。言葉にすると簡単そうですが、これができる技術者と設備を揃えるには相当な投資と経験が要ります。

日本保利化成株式会社という企業

群馬県太田市発のリサイクル専業メーカー

日本保利化成株式会社は2018年1月設立の、廃プラスチックのマテリアルリサイクルを専門とする企業です。本社工場は群馬県太田市。協力提携工場を茨城県桜川市と滋賀県長浜市に持ち、中国にはグループ会社を3社構えています。

代表取締役は郭保利氏。事業内容は「廃プラスチックのマテリアルリサイクルによる合成樹脂の加工及び原料の国内外販売」。工場や企業から排出される廃プラスチック(PIR材・PCR材)を回収し、徹底した選別・洗浄・粉砕を経て再生ペレットとして供給しています。

PIR材とは工場内で発生する成型不良や端材のこと。PCR材は使用済み製品からのリサイクル素材です。どちらも対応できる点は、排出事業者にとってワンストップで依頼できるメリットがあります。

「廃プラスチックの加工と原料販売」と書くと地味に見えるかもしれません。けれど、先ほどのマテリアルリサイクル率22%という数字を思い出してください。この領域で事業を成り立たせている企業は、今の日本にとって貴重な存在です。

50種類以上の樹脂に対応する技術力

調べていて一番驚いたのが、対応可能な樹脂の幅広さです。

  • PP、ABS、PSなどの汎用プラスチック
  • PC、POM、PBTなどのエンジニアリングプラスチック
  • PPS、PTFE、PEEKなどのスーパーエンプラ
  • メッキ品や金属インサート成型品といった難リサイクル資材

50種類以上。充填剤入りの樹脂にも対応しています。

銀行員時代、製造業の融資案件では「他社にない技術を持っているか」が大きな審査ポイントでした。幅広い樹脂に対応できるということは、選別・洗浄・粉砕・溶融の各工程にノウハウと設備が蓄積されているということ。設立から8年の会社がこの対応力を持っている事実は、率直にすごいと感じます。

設立7年でGRS認証を取得した意味

GRS認証とは

GRS(Global Recycled Standard)は、製品に含まれるリサイクル材の含有量を証明し、その製造工程が環境的・社会的に配慮されていることを保証する国際認証です。環境省の環境ラベルデータベースにも登録されており、米国の非営利団体テキスタイル・エクスチェンジが運営しています。

認証取得には5つの基準をクリアしなければなりません。

  • リサイクル材の含有率(認証には20%以上、ロゴ使用には50%以上)
  • 原材料から最終製品までのサプライチェーン管理
  • 強制労働・児童労働の禁止、公正な賃金の確保といった社会的要件
  • エネルギー・水の使用管理や廃棄物削減などの環境要件
  • 有害化学物質の使用禁止・制限

ちなみに、GRSの下位規格としてRCS(Recycled Claim Standard)という認証もあります。RCSはリサイクル材の含有量証明に特化しており、社会・環境・化学物質管理の要件は含みません。日本保利化成株式会社が取得したのは上位規格のGRS。つまり、「リサイクルしています」の証明だけでなく、環境負荷の低減、労働環境の整備、化学物質の管理まで含めてクリアしているということです。

第三者機関が毎年監査を行い、更新審査に合格しなければ認証は維持できません。取って終わりではなく、継続的に基準を満たし続ける必要があります。

中小企業がGRS認証を取る重みとは

日本保利化成株式会社がGRS認証を取得したのは2025年4月。設立から7年での取得です。

国内でGRS認証を持つ企業として名前が挙がるのは、旭化成や伊藤忠商事といった大手が中心。資本金1,000万円の中小企業がこの認証を取得するのは、コスト面でも運用面でもハードルが高い。

それでも取得に踏み切ったのは、「国際基準で認められた品質管理体制を持つ」という決意の表れです。取引先に対して「当社の再生原料はグローバル基準をクリアしています」と言い切れる。営業面での信用力が段違いに上がります。

SDGs経営の三本柱を読み解く

日本保利化成株式会社はSDGs経営として、3つの柱を掲げています。

循環型経済の実現とCO2削減

同社が一貫してこだわっているのがマテリアルリサイクルです。サーマルリサイクル(焼却して熱回収)には流れず、廃プラスチックを選別・洗浄・粉砕して再生ペレットとして蘇らせる。CO2排出量の可視化にも取り組み、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用も推進しています。

従来「産業廃棄物」として処理されてきた廃プラスチックを「資源」として捉え直す。この姿勢が同社のすべての活動の土台になっています。

ダイバーシティ経営への取り組み

中小製造業でダイバーシティ経営を明確に掲げる企業は、実はそう多くありません。日本保利化成株式会社は、国籍・年齢・性別を問わず個々の能力が発揮できる職場環境の整備を進めています。

外国人労働者向けに通訳を配置し、就業規則を母国語で説明する体制を整えている。代表の郭氏が中国出身ということもあり、多国籍な人材の活用に対する理解が深いのは大きな強みです。「健康経営優良法人」の認定取得も推進中とのこと。

銀行員時代、中小製造業の経営者から「人が採れない」という悩みをどれだけ聞いたかわかりません。特に地方の工場は若手の採用に苦労しています。その中で、国籍を問わず人材を受け入れ、言語面のサポートまで整備している企業は、採用力の面でも一歩先を行っています。

地域社会との連携

業界団体への加入も積極的です。日本不織布協会、東日本プラスチック製品工業協会、群馬県・栃木県プラスチック工業協会に所属し、業界全体の底上げに関わっています。地域行事への寄付や参画、定期的な近隣清掃活動も実施。

群馬県太田市に根ざしながら、海外にもグループ会社を持つグローバルな事業展開。この「ローカル×グローバル」のバランスが同社の大きな特徴です。

これら3つの柱の詳細は、日本保利化成株式会社のSDGs経営について特集した記事で具体的にまとめられています。興味のある方はあわせてご覧ください。

元銀行員の目で見た「本気度」のポイント

事業構造から見える覚悟

銀行員時代に何百社もの中小企業を見てきた経験から、この会社の事業構造には「本気のサイン」がいくつも見えます。

  • マテリアルリサイクル一本に絞っている(安易にサーマルに流れていない)
  • 50種類以上の樹脂対応という技術の幅と深さ
  • GRS認証の取得で国際基準をクリアしている
  • 中国にグループ会社3社を持ち、国内外の販路を確保している

1つ目は特に重要です。サーマルリサイクルのほうが処理は楽で、事業としての参入障壁も低い。それでもマテリアルリサイクルに特化するのは、「廃プラスチックを本当の意味で資源に戻す」という信念がなければ続けられません。

取引銀行は三井住友銀行、群馬銀行、東和銀行、武蔵野銀行。メガバンクと地方銀行の両方が取引先についているのは、事業の将来性と安定性が一定水準で評価されている証拠です。融資審査をしていた側の人間としては、この顔ぶれを見るだけで会社の信用度がある程度わかります。

法制度の追い風も

2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行されます。一定規模以上のメーカーに対して、再生資源の利用計画策定や定期報告が義務づけられる内容です。

この法改正は、製造業にとって「再生原料を使わざるを得ない」状況を生みます。当然、品質が安定していて、トレーサビリティが確保された再生プラスチック原料への需要はさらに高まります。

日本保利化成株式会社のようにGRS認証を持ち、幅広い樹脂に対応でき、しかも国内に複数拠点を構えるリサイクル企業は、まさにこの需要の受け皿になれるポジションにいます。タイミングを狙ったのか、結果としてそうなったのかはわかりませんが、GRS認証の取得が法改正の直前だったことを考えると、先を見据えた経営判断だったように思えます。

まとめ

日本保利化成株式会社を調べてみて、「廃プラリサイクルに本気で取り組む」とはどういうことなのか、その輪郭がはっきり見えました。

マテリアルリサイクルへの一貫したこだわり。50種類以上の樹脂に対応する技術力。設立7年でのGRS認証取得。ダイバーシティ経営や地域貢献を含むSDGs経営の実践。どれも「やっています」ではなく「やり切っている」という印象を受けます。

日本のマテリアルリサイクル率22%は、裏を返せば伸びしろがまだまだあるということ。群馬県太田市のリサイクル企業がこの数字をどう動かしていくのか、元銀行員のビジネスライターとして引き続き注目していきます。

最終更新日 2026年4月22日 by nerdyf